ある心理学の実験がある。対処は3才から6才の子ども43人。彼らに3次元コピー機を「どんなモノでもコピーできるんだよ」と説明し、実際に見本のオモチャのコピーをして見せた。それを見た子どもたちの反応が面白い。コピーのおもちゃに大興奮した彼らは、オリジナルのおもちゃよりコピーに対して喜ぶ傾向にあったそうだ。ところが、次に同じ子どもたちに「きみたちの大事なおもちゃを同じようにコピーしてあげよう」といったとき、ほとんどの子どもがそれを拒否するという結果がでたそうだ。オリジナルだからこそ、価値がある。愛着があるし、じぶんの好みにしっくりくる。手になじむ……。オリジナルのものを手にしたときに得られる高揚感を人は好むのである。
ファッションについても同じことがいえるのではないだろうか。好きなブランドのアイテムを手にしたときの幸福感は格別である。もし、それがコピー商品であったら? デザイン的な相違に差がなかったとしてもオリジナルが人に与える審理的作用は望めないであろう。「コピー商品をさも本物のように偽って見せる」というような使いかたをすれば、卑屈な体験にもなることだろう。
一流ブランド品にはデザイナーや職人のこだわりやプライドという背景がある。生地や皮の色、厚さ、縫製の仕方など隅ずみまで計算され、唯一無二のものだという作り手の自信が存在意義を高めている。そこで提案したいのが「じぶんに自信がないときほど、一流ブランドの力を借りてもいいのだ」ということである。つまり「虎の威を借る」のである。たとえば、それを実行しているのが液晶画面の向こう側にいる芸能人や有名人なのである。彼らは競争の激しい世界で少しでもじぶんの存在価値を高めてライバルに勝つために、より上質のブランドの力を借りているのである。この方法は、かなり有効である。ブランドによる条件づけで、仮のパワーを得てじぶんを大きく見せる。最初は仮のパワーでも、やがてはじぶんの栄養になり、じぶんを変化させるきっかけ作りにもなるはずだ。