●ミニマルライフとは
世代のネーミングにも使われた「ミニマルライフ」という言葉は、2015年のいまではトレンド用語として頻繁に耳にするようになりました。テレビや雑誌でも取りあげられることが多くなり、インターネットでも熱く議論が展開されています。
「ミニマルライフ」とは、カンタンに説明すると「極力、物を持たず、情報も入れすぎず、シンプルに生きる」こと。これを実践する人々は「ミニマリスト」とも呼ばれます。「ミニマリスト」を日本語にすると「最小限主義」。「最少のモノで最大を得る」がコンセプトだとか。
「ミニマルライフ」に人々が関心を持ち、共感を覚えたきっかけは数年前に一斉を風靡した「断・捨・離」ではないでしょうか。それまでは、次から次へ市場に出てくる新製品の数々を手に入れることに満足していた社会。やがて終わりのない購買競争に疲弊し、溢れたモノたちに家を占拠され、居場所をなくしたことではじめて我にかえった人々が行き着いたのが「断・捨・離」。そこで、じぶん自身にほんとうに必要なモノは何か。じぶんが求めているモノとは何かなど内面と真剣に向き合いはじめたことにより、物質主義に疑問を持つようになった人が増えていったように思われます。
そして、よりエコであり、よりサスティナブル(第6章参照)へと向かっている時代背景とあいまって「不必要なモノを捨てる」のではなく、「すぐに捨てるモノは手にしない」「廃棄せずに済むように必要かどうか熟慮する」から「ミニマルライフ」へ。
「ミニマルライフ」は、じぶんの価値観の再確認をさせてくれるライフスタイルです。たとえば、かつて購入した高額のブランドバッグが手元にあったとします。いまは全く使っていないし、使いたいとも思わないとしたら? じぶん価値観が大きく変わっていることに気づくはずです。心理学やカウンセリングなどで、部屋はじぶん自身を映しだす鏡だと言われます。散らかった部屋や物で溢れた部屋に住んでいる人は何かしらの悩みやストレス、心の葛藤などを抱えている場合が多いようです。「散らかった物を片付けはじめても、何を捨てていいのか分からない」という場合は、じぶんにとって何が必要かを選択・決断できない心の状態である可能性があります。そういう人は、往々にして人の意見に迎合してしまいがちだったり、何かを決断するリスクを回避したいのかもしれません。
「出かけると、ついつい物を買ってしまう」という人であれば、買い物依存症の場合も。衝動買いや大量買いなどをして一時的に気分がよくなってしまう人の部屋は、使わないブランド品や2つや3つの同じ商品などで溢れているケースが多いのです。物を買う行為にしか興味がないため、買った物に対して意識が向けられないため、片づけることもしない。心のどこかで衝動買いをしたことに後ろめたさを感じていると、買ったものを改めて見ることにも嫌悪感を感じてしまうのです。
買い物依存症に陥る人はストレスや孤独感を抱いている人、自己評価が低い人などがあげられます。なぜか? それは、買い物をするプロセスに原因があるそうです。お店に入ってたくさん並ぶ素敵な品物を見たとき、「この中の何かを手にするんだ!」と思ったときに感じる高揚感、そして「こんなじぶんでも店員さんはていねいに接してくれる」ことで自尊心が満たされる…などで、つかのま「ダメなじぶん」が忘れられる。ついつい必要でもないものやじぶんの使えるお金以上の買い物をしてしまうのです。もし、ミニマルライフに気持ちを切り替えられれば、新しいじぶんと出会えるのではないでしょうか。終わることのないじぶん探しに疲れた人は、ぜひミニマルライフに目を向けてみてほしいものです。