色のパワーとビジネスの関係

色が人間にさまざまな影響力を持つことは、お分かりいただけたと思います。色のことをよく知ればじぶんのモチベーションを上げるツールにもなるし、他者に対する印象を良くすることも可能な訳です。第一段階としてじぶんの色=パーソナルカラ―をご紹介していきます。まずはパーソナルカラーの歴史について、ほんのさわりだけひも解いておきましょう。
 色について一定の理論があることを発見したのはドイツの美術学者・画家のヨハネス・イッテン(1888~1967年)と言われています。話の発端はデザイン学校で講師をしていたイッテンが、生徒たちにリンゴの絵を書かせたときに始まります。生徒たちの絵の色使いが描いた本人の髪・瞳・肌の色に調和する色合いになっていることをイッテンが発見。その後、彼の理論をもとに、四季のイメージで色を4つのグループに分けた「フォーシーズンズカラーシステム」に体系づけられ、パーソナルカラーの診断基準ができあがりました。四季のイメージを用いたのは「誰でもイメージしやすい」といった理由からだったとか。
 人の印象を左右する色の効用に、まっさきに飛びついたのがアメリカの政治家たち。1960年代、政治家たちはカラーコンサルタントをブレーンに加え、選挙のときのイメージ戦略に乗り出しました。
 パーソナルカラーを戦略的に利用して成功したといわれているのが、アメリカの歴代大統領でも人気が高いジョン・F・ケネディ氏。1959年の大統領選挙でケネディとニクソンがテレビで討論会をしたときのことです。その際、ケネディはメイクアップしてテレビ出演に臨んだとか。ちなみにテレビは当時、カラ―ではなくモノクロではありましたが、ファウンデーションを塗ったケネディの顔色は日焼けをした精悍な若者という風にテレビに映ったそうです。また、ケネディは濃い色(一説には濃紺)のスーツを、ニクソンは淡い色(一説には茶色)のスーツを着たため、ケネディの存在感が際立ったとも言われています。ファッションコンサルタントを始めとする専門家たちと良い印象づくりを研究していたケネディは、いち早くイメージ戦略を取入れることで、みごと大統領の座を射止めたわけです。以来、アメリカの大統領選において候補者はファッションコンサルタントを雇うことが通例となったそうです。また、アメリカでは真っ赤なネクタイを「パワータイ」とし、ここ一番!というシーンで使うことが慣例的だそうで、近年のアメリカ大統領選でも大事な演説時に赤いネクタイをする候補者は多いと言われています。
 次に日本におけるパーソナルカラーの歩みをかんたんにご紹介します。パーソナルカラーを使ったカラ―・コーディネートがビジネスとして考えられるようになったのは、1980年代に入ってから。当時、日本人の特徴を体系的に分類することの難しさ、色に対するニーズの少なさに加えて一極集中のブランドブームなどもあり、すぐには受けいれられませんでした。

 1990年代にはファッションも多種多様になり、いわゆる「私ファッション」の時代が到来。カラ―・コーディネートが徐々に注目されるようになったようです。それら試行錯誤を経て、日本人に合わせた「フォーシーズンズカラーシステム」が登場。現在ではファッションやメイクアップだけでなく、企業のCI活動や人材教育の場、インテリアなどの生活空間から街づくりにいたるまで、色が人の心理にもたらす効果について重要視されています。