ホテルマンは靴を見て客質を判断するという話しがあります。「一流の人には靴を手入れする専属のスタッフがいるはず。身なりが良くても靴の状態が悪ければ一流を装っている人間かもしれないので行動に注意」という考えからだとか。ビジネスシーンでは「きちんと手入れされた靴を履いている人は細かな配慮ができる」というイメージが定着しているようです。
カンザス大学の心理教授オムリ・ギラス氏が、靴から所有者の情報が読み取れるかどうかについて行った実験があります。(参考資料 2014年8月「Journal of Research in Personality」vol.46掲載 「Shoes as source of first impressions」)
208人の足元の写真を63人の生徒に見せた後、それぞれの写真の人物について「社会的地位」「性格」「外交的または内向的か」などを推測してもらったそうです。結果は、ほぼすべての写真の人物の特性を生徒たちは当てることができたとか。さらに、この実験結果を分析すると
・ 高価な靴を履く人は高所得者。
・ 派手でカラフルな靴を履く人は、外交的で優しい。
・ 実用的で機能性のある靴を履く人は親しみやすい。
・ アンクルブーツやブーティーは積極的で攻撃的なタイプ。
・ 履くのに手間がかかる靴はおとなしい性格。
・ ありきたりな靴の人は見た目にも特徴がなく、マイペースで人間関係が苦手。
などの傾向が見られたそうです。この結果からギラス氏は「靴は履いている人の情報を発信する非言語的なメッセージでもあるため、靴にもっと注意をはらうべき」と述べています。
靴に限らず、身につける小物はすべて自分の分身と言っても過言ではありません。相対する人は、バッグや靴、アクセサリーなどにその人を感じています。シチュエーションに応じて小物でセルフプロデュースできれば、望んでいる結果を手に入れる近道になるはずです。
たとえば、レザーアイテムは色とグレードを揃えることが基本。靴・バッグ・ベルトなどの色を統一すると洗練された印象になります。ビジネスシーンで個性をアピールしたい場合は、レザーアイテムにインパクトがある物を選ぶと効果的です。色については、後でくわしく解説します。
リラックス感や親しみやすさを演出したい場合は、最近のトレンドである「エフォートレス」な着こなしもいいでしょう。「エフォートレス(effortless)」とは、女性誌「ELLE」が発信したトレンドで、正式には「エフォートレス・シック(effortless chic)」。意味は肩の力を抜いた大人のカジュアルファッション。イメージはフランスの女優シャルロット・ゲンズブールやソフィア・コッポラ監督のスタイルだとか。着こなしのポイントは「サイズが大きめの服でリラックス感をだす」「身体のラインを出さない」「ボタンを開けて肌を少しだけ見せる」など。ビジネスシーンでエフォートレス・スタイルは難しいかもしれません。たとえば、上下揃えたスーツではなく、ジャケット+スカートやパンツにし、ブラウスのボタンを多めに外す。またはジャケットは少し大きめの物を選び、袖をまくり上げる……などを取入れるといいかもしれません。
もうひとつ、似て非なるトレンドワードに「ノームコア(normcore)があります。「ノーマル(normal)」と「ハードコア(hardcore)」を合わせた造語で、意味は「究極のふつう」。色味を抑え、色数も少なくしたモノトーンコーデでありつつ、こなれ感があるファッショスタイルのこと。ノームコア・スタイルの代表はアップル創業者の故スティーブ・ジョブス氏だとか。つまり、人目を気にするより自分らしくあれ、というのがテーマともいえます。ジョブズ氏のタートルネックはイッセイミヤケのオーダーメイド品で、ジョブズ氏のこだわりが詰まった唯一無二のタートルネックだそう。ノームコアならではのこなれ感とダサさとの一線を画すのは、本人のこだわり+アイテムの質の高さも重要。たとえば、シンプルなスーツを着ている女性の指を母親から譲り受けたアンティークな指輪が飾っていれば、育ちの良さや品格などを語ってくれます。