対話する服

対話する服
 ここまでいかに服がじぶん自身を物語るか、について書いてきました。服に語らせるうえで忘れてはならないのは、相手にどんな自分の印象形成をしてもらいたいかをイメージしながら服をコーディネイトする、です。「今日、この場面ではどんな自分でありたいか」「相手にどう受け入れてもらいたいか」「相手からどんな反応を得たいのか」をちゃんと意識する。つまり、自分が目指すゴールをはっきりと視界に入れているかどうか。
 私が実際に体験したエピソードをひとつの例としてご紹介しましょう。行きつけのお店のクリスマスパーティーに参加したときのことです。おなじくなじみ客の女性Aさんを紹介され、一緒に楽しくお酒を飲みました。それからAさんと仲よくなったのですが、1年ほど経ったあるとき、「高田さんは第一印象と全然違う。初対面のときは破天荒な人だと思った」と告白されたのです。はじめて会ったとき、お酒が入っていたし、その場の雰囲気でお店のマスターとふざけて一緒に踊っていたこともありますが、何より彼女に強烈な印象を与えたのは私が着ていた黄色のパーカーだったというのです。「クリスマスパーティーに黄色のパーカー? ユニークな服選びをするから、変わった人なんじゃないかな」と思ったらしいのです。私としては、自宅から徒歩5分ほどのご近所にあるなじみのお店だったので、平服での参加であったし、黄色という明るい色でその場の楽しい雰囲気に合わせたつもりでした。Aさんとの価値観の違いもありますが、もし、その場でAさんから「どうして黄色のパーカーを着ているの?」と聞かれていれば説明したでしょうし、彼女の印象も違ったものになっていたはずです。でも、初対面のマナーとして、彼女はそんなストレートな質問はしませんでした。つまり、Aさんは私のファッションが語る私のキャラクターを「おかしな人」と解釈し、そのまま印象形成されてしまったのです。その後、一緒に過ごす機会が増え、私という人間をよく知るようになったとき、最初の印象とのギャップを埋めるのが大変だったと言われました。つまり、私は彼女が思った「おかしな人」の定義には当てはまらなかったのでしょう(笑)。つくづく、服が人に与える影響力のすごさには驚かされます。
 とにかく、服選びで大切なのはシーンに合っているかどうかです。解説してみましょう。ビジネスシーンでは服装は「記号」になります。所属であったり、職種であったり、地位や立場を表すツールです。まず、自分の職種や会社にふさわしい服装であるかどうかをよくチェックしてみてください。ビジネスを含む大切な面談では、必ず襟がある服にしましょう。「襟をただす」という言葉もあるように、襟がある服は謙虚な気持ちを代弁してくれるはずです。さらに、気が張る面談ではジャケットが鎧となってくれます。スーツでなくても襟付きのシャツとジャケットを着るだけで、改まり感が演出できます。
 デートの場合、その日のテーマが決まっていればシチューションや目的地に合った服を選びましょう。相手の好みがわかっていれば、それに合わせてみるのもひとつの方法です。「こちらに合わせてくれたんだな」と好感度がアップするはずです。

 婚活の場合は、目的によって少し服選びが変わります。どうしても、どんな相手でも結婚を前提にした交際相手と出会いたいのであれば、女性らしく、やさしく見えるようなパステルカラーのブラウススーツなどがいいでしょう。そして、あまり流行を取り入れすぎないことをおすすめします。自分自身が抱く具体的な結婚生活のイメージに合う相手と交際したい場合は、結婚後の生活のイメージに合ったファッションにしましょう。多くを語らずともファッションがあなたの希望を語ってくれるはずです。いずれのシーンでも、あなたの意図を正しく伝えてくれるコーディネートをすること。それが、あなたの夢が現実化する第一歩になるかもしれません。