ヒトはおそらく、自然環境の変化に対応するために衣服を身につけるようになりました。やがて、社会形成がなされると役割分担から社会的身分というものが生まれ、着用する衣服にも役割が生まれた。立場や身分を相手に伝えるコミュニケーション・ツールとして服が利用されたわけです。
603年、聖徳太子に制定されたとされる冠位十二階。役人の位を12に分け、それぞれの色も定めた制度です。冠の色を見れば、どんな立場の人でどんな役職の人か分かったので仕事もスムーズだったことでしょう。
制服など付加価値のある衣服は、他者に心理的効果を与えることができます。たとえば、医師の白衣や警察官の制服に対し、「この服を着ている人物は信頼に値する」という先入観を人は持ちます。これら、人に対していい印象を与える事例について、心理学では「威光効果」と言います。
堺雅人さんが主演した映画「クヒオ大佐」という作品があります。これは実在の結婚詐欺師がモデル。「自分はアメリカ人のパイロットでクヒオ大佐」だと名乗り、数人の女性から約1億円をだましとったのです。クヒオ大佐と名乗った男は髪を金髪に染め、軍服のレプリカを着ていたそうです。この事件でも「金髪」「軍服」の威光効果のほどが伺えます。
人は自分が思っている以上に視界からの情報に左右されやすいのです。そして、視界から入ってくる情報が心地いいものであるほど、その情報源にいい印象を持ちます。「高級な外車に乗っている」「美しい姿勢である」「字がきれいである」などなど……。人対人の場合、「後光効果」のある衣服を活用することで人間関係の構築がよりスムーズになるはずです。