「人は見かけが9割」という本が以前、話題になりました。「社会を支配しているのはノンバーバル・コミュニケーションである」とし、心理学や社会学など多彩な角度からノンバーバル・コミュニケーションについて語られています。
「ノンバーバル・コミュニケーション」(non—verbal communication)とは、言語以外の手段で行われるコミュニケーションのこと。非言語コミュニケーションとも言います。おもに心理学で使われる言葉です。
コミュニケーションの手段として人は言葉以外にも表情、言葉の抑揚、身振り・手振り、姿勢から服装なども用いています。これら非言語コミュニケーション・ツールは、人間関係において言葉以上に多くの役割を担っているとも言われています。たとえば「目は口ほどに物を言い」ということわざにもあるように。ノンバーバル・コミュニケーションはチャールズ・ダーウィンも研究していたそうです。
ノンバーバル・コミュニケーションを利用して成功した著名人のエピソードは、たくさんあります。たとえば、アメリカ16代大統領のエイブラハム・リンカーンもそのひとり。彼は雄弁家で演説は上手だったそうですが、小柄で貧弱だったため、見ためがいまひとつでした。あるとき、リンカーンはひとりの有権者女性から次のようなアドバイスをもらったそうです。
「あなたのポスターに口ひげを書いてみたら、大統領にふさわしい風格が出ましたよ!」。
このアドバイスによって、リンカーンはひげを伸ばすことにしたとか。
アメリカの心理学者レオナード・ビックマンの有名な実験があります。電話ボックスにコインのお金を置いておきます。電話ボックスに入った人に「ここにコインが置いてありませんでしたか?」と、ある人物にたずねさせます。コインの有無を訪ねる人物の身なりは2パターン。Aはきちんとしたスーツの紳士。Bはヨレヨレで清潔感のない服装の男性。実験の結果、Aの人物に対しては8割の人が丁寧に対応してコインがあったことを教えてくれたとか。対してBの人物に対しては7割の人が怪しんで、コインの有無についても教えてくれなかったそうです。つまり、同じ言葉を発していても、見ための違いで人はまったく異なる情報を受け取ってしまうわけです。さて、今度、大切なミーティングがあるとき、あなたはどんなコーディネートで行きますか?