ナポレオンのこんな言葉をご存知でしょうか?
「人はまとった制服のしもべとなる」。
身につける物がどれだけ人に心理的な影響を及ぼすかということを
端的に言った名言ではないでしょうか。
私は人生のさまざまなシーンで、この言葉が当てはまるような体験してきました。
ファッションの仕事を始めたばかりの頃は、
憧れの女性上司のファッションを真似ることで自分に自信が持てると思ってました。
そんな若かりし頃、ひとつのハイブランドとの出会いがありました。
きっかけは初めての海外出張。
レイデザイン研究所で仕事を始めてから半年後に
ミラノ・パリ・ニューヨークにリサーチに出かけたときのことです。
憧れのミラノをリサーチしているとき、あるショップの前で雷に打たれたような衝撃を受けました。
そのブランドは、ジョルジョ・アルマーニ。
一流ファッションの聖地・ミラノにおいてもひときわオーラを放つアルマーニは、
私の感性を刺激し、新しい世界へと導いてくれたのです。
「この感動を持って帰らねば!」と思った私でした。
その出張の際に持っていった5万円ほどを全てはたいてバッグを購入。
(今からおよそ25年前の5万円と言えば、かなり大金!)
そして、まだ、出張は始まったばかりだったというのに、お財布はカラに。
同行していた上司には、お金を借りるハメになりましたが、
私は大満足!でした。
翌年も海外出張でミラノに行く機会があり、そのときはスーツを購入。
24、5歳の私がアルマーニの直営店でスーツを買うなんて、
かなり背伸びをしたかもしれません。
でも、前回のブログに書いたように当時はキャリアが1〜2年だったにも関わらず、
クライアントのさまざまなニーズに応えて結果をだすべく奮闘していた時代。
私は日々、自分を大きく見せるために必死でした。
そして、アルマーニのスーツの威光は私に大きなパワーを与えてくれたのです。
ハイブランドのスーツの説得力はクライアントに対してはもちろん、
何より、私自身にもいい暗示をかけることができたと思います。
今となって分かったことですが
20代で着るハイブランドは、その価値が2倍にも3倍にもなります。
まず、服に合わせようとして無意識に背筋が伸びて、見ための印象にも変化が。
そして、服自体が持つオーラが、若さゆえの自信の無さを隠してくれるのです。
いわば “鎧”なのです。
だから、20代や30代でキャリアップを目指している人や大事なプレゼンテーションを抱えている人は、ぜひハイブランドの洋服を1着、手に入れてみてください。
きっとファッションとあなたが良い化学反応を起こして、新しい自分を導いてくれるはずです。
アルマーニのスーツは私にとって素晴らしいビジネスパートナーでしたが、
実は、ひとつ失敗談もあるのです。
20代のころ、ベネトンの創業者であるルチアーノ・ベネトン氏が来日され、
ご縁があって私が京都・大阪のリサーチとサンプリングをすることになりました。
世界のセレブをアテンドするのですから、
とうぜん私は勝負服のアルマーニのスーツを着て一行をお迎え。
が、そのとき同行していたルチアーノの妹・ジュリアーナ(ベネトンのデザイナー)からひと言。
「若いあなたにアルマーニはよくない! ケンゾーのような若々しい服を着なさい」。
たしかに、そのとき一緒に来日していたジュリアーナのお嬢さんは(私と同年代)、
上から下までカラフルなケンゾー・ファッションでした。
後で聞くと、イタリアでアルマーニのスーツは
「官公庁などのお堅い仕事につく年配の女性が着る」というイメージがあるという話でした。
後から思えば彼らがアルマーニに対して持つイメージや、ベネトンのファッション性などをもっとよく検討しておけば、よかったのです。
ファッションとは時に頼もしい道具であるし、
使い方次第で、意図しない自分を演出してしまうツールにもなると、
この体験で痛感しました。
今となってはいい教訓になった出来事でした。
「人はまとった制服のしもべとなる」。
部下を育てるのにナポレオンは1つ上の階級の制服を与えたそうです。
だからこそ私はみなさん、とくに若い人には
シーンごとに目的意識を持って服を選んでほしいと思います。
ときには、自分には身分不相応だと思えるようなハイブランドにも挑戦してほしい。
素敵に輝きたい、明日の服選び、ちょっと頑張ってみませんか?