ここ数年、就活生の定番となっているのがブラックスーツ。10年ちょっと前から主流となっています。なぜ、ここまで「就活=ブラックスーツ」が定番になったのか、理由は定かではないようですが、バブル崩壊後の不景気を受け、「ブラックスーツは就活にも冠婚葬祭にも使える」が定説になっています。厳密に言うと就活用のブラックスーツと冠婚葬祭用の黒スーツでは、黒の深みが違う。つまり、就活用のスーツを冠婚葬祭で着ると、浮いてしまうのですが……。
かつてDCブランドが日本を席巻した時代があります。そのとき、全身を黒でコーディネートとした、いわゆる「カラス族」ファッションが流行。それ以前のニュートラと称されたお嬢様風ファッションと相反するテイストであったため、とても斬新だと当時は話題に。以来、「カラス族」スタイルはモード系ファッションの定番として認知され、ファッションの中で「黒」は、斬新・神秘的・おとなっぽいなどのイメージを確立したように思います。
普通、色は光を反射するという特性を持っていますが、この「黒」という色はすべての光を吸収してしまう特性を持っています。そのため、人は黒に対して独特の存在感があると感じてしまうのでしょう。ファッションの分野においてはスリムに見せてくれるという効果も期待されています。一方で、黒には重い・硬いといったイメージも。
色彩心理学的にアプローチすると、黒は何かを隠したいときに使う色。また、光を反射しない特性から肌の色を美しく見せない色であり、その結果、老けた印象を作ってしまう危険性も。なかなか扱いが難しい色であり、フレッシュな就活生には向かない色だというのが私の私見。
もし、あなたの職業が占い師であれば黒はぴったり。神秘的で影のような存在という印象を相談者に与えられるし、実年齢よりも老けて見えたとしても経験豊富な印象となり言葉に説得力が生まれるかもしれません。が、もしも、あなたの仕事がチームワークを大切にする内容であったり、取引先の人とのコミュニケーションが大事な仕事であれば、黒がメインのコーディネートは避けたほうがいいでしょう。「何か話しづらいな」「何を考えているのかわからない人だな」「何か悲しいことがあったのかな」などと誤ったイメージを相手に与えかねません。何より、黒はすべての光を吸収してしまうので明るいオーラが外に発せられることがなく、魅力をアピールしにくくなります。黒は使い方ひとつで毒にも薬にもなる、まさに魔力を秘めた色なのです。
黒の利点としては、他の色を引き立たせてくれるという作用もあるため、ポイントとして使うといいでしょう。黒の独特の存在感を利用して「私はほかと違う」という自己アピールしたいときにもいいかもしれません。反対に自信の無さや心の弱さを隠したいときに黒でコーディネートしてしまうとネガティブなオーラを発してしまい、隠したい要素を浮き上がらせてしまうので、要注意。つまり、自己アピールの場でもある就職活動には、本当はいちばん向かない色なのです。 それゆえ、私はこの「就活=ブラックスーツ」という潮流が早く変わればいいと思っているのですが……。ただ、いまの就活生がブラックスーツを選ぶ主な理由は「ムダに突出しないこと」のようです。つまり、他の就活生と横並びになり、フラットな状態で面接に臨むのが目的だとか。他と違うスーツを着ることでマイナスとなるかもしれない恐れを排除しているそうです。とはいえ、それは就職氷河期の考え方であって、売り手市場のときにはもう少し自己アピールをして面接に臨んでもいいのでは? と思うのですが。果たして、ブラックスーツが無くなる時代はくるのでしょうか。