実は、私たちは常日頃から意識せずとも衣服の「後光効果」を利用していることがあります。いわゆる「TPO」を意識した服装をすること。良識ある社会人として、TPOを意識した服装をしなさいと教えられてきたはずです。つまり、場所をわきまえた服装をさえしていれば、それだけで「常識のある人だ」という好印象を持ってもらえるのです。だれもが服装が持つ効果をなんとなくは知っているわけです。
アメリカ・スタンフォード大学の心理学部で行われた有名な実験があります。無作為に集められた被験者のうち、ほぼ同じ人数を看守役と囚人役の2つのグループにわけ、実際の刑務所を舞台にそれぞれの役割を演じさせました。役割に合わせた制服を着て。その結果、時間経過とともに、看守役は看守らしく、囚人役は囚人らしく、演技を超えたふるまいをするようになったそうです。映画化もされるほど衝撃的な実験でした。この実験では、いろいろな人間心理が分かったのですが、衣服が人に与える心理効果の大きさもそのひとつ。制服を着ることで人は役割を意識し、その役割通りの行動をしようとする心理が無意識に働くのです。まさに前述したナポレオンの「人はまとった制服のしもべとなる」。
この心理的効果を意識的に活用できれば、とてもいい処世術になると思いませんか? じぶんがこれから会う人とどんな関係を築きたいか。どんな印象を与えたいか。目的を達するために人に与えたい心理的効果を明確にすれば、じぶんが着るべき服のテーマも見えてくるはず。たとえ、自分に自信が無くても、そこは「馬子にも衣装」です。服の力を借りて自信を持った自分を演じきればいいのです。
人間心理と服の関係がいかに密接で複雑なものか。これから、じっくりと掘り下げていきたいと思います。